船頭の話 第二話 「魔女の真珠」

船頭の話 第二話 「魔女の真珠」
          原作脚本:ジニー

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「あー!トリンシックであっしが出会った女の話をしましたっけ?
凄腕の魔法使いでしたぜ。なに、つまらん話でさ」

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<効果音>乱暴にドアが開く音

<効果音>鎧の音、どかどかと足音


なに?! なんなの!!

若い騎士さん、うちはパン屋よ、店のなかで剣を振り回すのはやめてよ!

魔女をだせですって? 呪いをとけですって? 一体何の話を・・・・・・あー・・・・・はあぁぁ・・・・・わかったわ、うちのおじいちゃんね?

船頭をしてるおじいちゃんが、またよけいなことをおしゃべりしたのね。

<効果音>がしゃーん


やめて、やめてよ! 嘘つきは叩き殺すなんて、物騒なことはいわないでよ。おじいちゃんは嘘はついてないわ、少し落ち着いて話を聞いてよ!


昔ある夫婦を知っていたわ。

だんなさんが、騎士になるために、トリンシックへ移り住んできたのだけれど、奥さんの体が弱くてね。だんなさんは、奥さんの薬代のために、剣や鎧は売ってしまい、鍛冶屋で働くようになったのよ。

どんなに高価な、良い薬を使っても、奥さんの具合はよくならなかったわ。

奥さんの身体には海風がよくないというので、ふたりは城壁の外の森の中に、小さな小屋をたてて住んでいたの。だんなさんはそこから、城壁の中の鍛冶屋に通っていたのよ。



だんなさんが鍛冶屋で、夜通しふいごを吹くときは、私がパンといっしょに食事を持って、泊まりにいってたの。

奥さんはそのときはもうほとんど寝たきりでね、私が訪ねると、話相手がいてうれしいと、いろいろ話してくれたわ。

夫婦は徳之島の出身だということや、だんなさんが武士ではなく、騎士になりたがったので、トリンシックにきたこと。
徳之島のミソスープが食べたいけれど、トリンシックでは材料が手にはいらなかったこと。
徳之島の海風と、トリンシックの海風は匂いが違うのだとも言っていたわ。


奥さんはいつも、ひとつぶ真珠のネックレスをしていたわ。

「これは徳之島の海で取れた真珠なのよ。真珠の中に、徳之島の海の一部があるような気がするの」

奥さんは徳之島へ帰りたがっているのだと、さびしそうに微笑む姿をみて思ったわ。でも、長い旅をするのはムリなほど弱っていたのよ。


あの夜も、だんなさんは鍛冶屋に泊まり仕事だったので、私は奥さんに付き添っていたの。でも、だんなさんが予定を代えて急に帰ってきたのよ。

「おまえをびっくりさせることがあるぞ!ミソスープだ!」


だんなさんは、旅の商人をひとり、連れてきていたわ。徳之島から来たという、その商人は、ミソスープの材料を持ち込んで、料理の腕も確かだったので、とても美味しいミソスープを作ってくれたわ。

初めて食べた異国の味は、かなりエキセントリックだったわね。

ミソスープを食べていつもより血色がよくなったおくさんをみて、だんなさんも嬉しそうでね。ふたりの馴れ初めを話してくれたわ。

「まだまだ若造だったころに、どうしても騎士になりたくて、家でして海にでたんだ。ところが嵐に会ってしまった。もうだめだと思ったが、陸に流れ着くことができた。その浜で出会ったのが妻だ。妻の献身的な看病で、俺は助かったんだ。」

おくさんは、だんなさんの話を、恥ずかしそうにほほを染めてに聞いていたわ。

「おまえをムリに、トリンシックに連れてきたのがいけなかった。元気になったら徳之島に帰ろうな」

「いいのよ、あなたの夢だったんだもの。私のために、騎士をあきらめてしまうことになって、ごめんなさい・・・・・・」

ふたりがとても愛し合っているのはわかりきったことだったわ。




「徳之島に帰りたいんだね?」

<効果音>こーん!(狐の鳴き声)


商人の姿が、一瞬で霧に包まれたわ。霧が消えるとそこには見たことのない獣の姿があったの。

「狐!?」

<効果音>割れる音

だんなさんが叫ぶと同時に、獣はおくさんに襲い掛かり、次の瞬間には窓を壊して外に飛び出していったの。

「大丈夫か!?」

「真珠を・・・・・返して・・・・・」

おくさんに怪我はないみたいだけれど、獣は真珠のネックレスを奪っていったのよ。

「取り返す!」

だんなさんは、たいまつをつかむと、獣を追いかけて飛び出したわ。

「お願い、あの人をひとりにしないで・・・・・」

奥さんをひとりにするほうが心配だったのだけど、必死に訴える目を見て、奥さんの言うとおりに、だんなさんを追ったの。

<効果音>草薮を進む音があれば。


先を走る、たいまつの赤い明かりを追いかけたわ。その先には、青白い光がゆらゆらと見えたの。森のくぼ地に、ちいさな池があったわ。獣はそこで止まったの。獣の目は、金色に怪しくひかり、尾は何本もにわかれて、その姿はぼんやりとしたつめたい光に包まれていたわ。

青白い光にうっすらと照らされて、女性が立っていたの。



みたこともない服装をしていたわ。後で知ったけれど、徳之島の民族衣装のキモノというものだったわ。

「わたしは、わたしのものを、返してもらいにきた」

「それは俺の妻のものだ!」

「真珠は、わたしの魔力の一部。おまえの妻は、わたしのよりしろ」

「・・・どういうことだ?」

「わたしは、徳之島の海で、おまえを気に入った。だが、私の魔力は、この地では衰えるばかり。徳之島にもどさなくてはいけない」



<効果音>こーん!(狐の鳴き声)

獣が一声鳴いたとたん、池も、獣も女性も消えていたわ。あとにはかすかに海の匂いがしていたの。

だんなさんとわたしが戻ると、奥さんは・・・・・・・・






奥さんはその姿のまま、砂になっていたの。かすかに、さっきと同じ海のにおいがする砂に。

「なんてことだ・・・・・」

だんなさんが震える手で触ると、砂は崩れてしまったわ・・・・・。

奥さんだった砂を拾い集めて、だんなさんは徳之島へ帰っていったわ。徳之島の海に撒くのですって。




あんなに素敵な夫婦だったのに、奥さんは魔力で作られた、人じゃないものだったのね。

どうしてそんなものを、あの女性は作ったのかしらね。

私のおじいちゃんが会ったことがあるのは、奥さんのほうよ。おじいちゃんはちょっとぼけちゃってるだけなんだから、許してちょうだい。

ところであなたが受けた呪いってなんなの?

ええ?一生恋人が出来ない呪いですって?それはあれね、あなたも魔女に気に入られてしまったのに違いないわ。ご愁傷さまね。

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(あとがき)

第二話も、第一話と同じスタッフで作成しました。

魔女の声には少々加工がほどこされています。

狐の鳴き声にこだわって、いろいろ探したのが良い思い出です。

なんでこだわるかって、そりゃ化け狐ですからね。こだわるしかないじゃないですか!w

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再放送をご希望のかたはコメントするか拍手をぽちっとしてください。

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