船頭の話 第三話 「死者の国へ」

船頭の話 第三話 「死者の国へ」
             原作脚本;ジニー


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「あー!ベスパーであっしが出会った男の話をしましたっけ?
西の海の果てには、死者の国があると確信してた奴でしたぜ。なに、つまらん話でさ」

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坊ちゃん、ほら、ベスパーの水神祭だっていうのに、いつまでも暗い顔をしているのはどうかと思いますよ。ゴンドラから水路越しに見る祭りの風景は、毎年絶景ですなあ。

坊ちゃん(すねてる、ふてくされている)
「うるさい、だまれジジイ、坊ちゃんとかやめろ。俺をいくつだと思ってるんだ」

ジジイにとっては、坊ちゃんはいつまでも坊ちゃんですよ。
南の商家のお嬢さんに振られたくらいで、いつまでもふさぎ込んで、ひきこもってるようじゃ、まっとうな男とはいえませんわ。

坊ちゃん
「うるさい、俺は振られてなんかいない」

あのお嬢さんは、ブリティンの船主の跡継ぎのところに、嫁にいっちまったんでしょう?

坊ちゃん
「あれは仕方なくだ。あいつは俺のことは好きでたまらないけどって泣いたんだ」

けど、っていいなすったんでしょう? そりゃあ振られたのと一緒ですわ。
あんまりだんな様に、心配かけるもんじゃあないですよ。

坊ちゃん
「うるさいな。こんな祭り、見飽きたよ。」

せっかく上等のゴンドラと、上等の船頭のこのジジイを手配した、だんな様のお気持ちがわからないようではねえ。

坊ちゃん
「おまえは本気で女と恋仲になったことがないから、俺の気持ちなんか、わからないんだ。」

おやおや、いってくれますねえ。坊ちゃんこそ、女のなにを知っているっていうんです。女ってものは、なめちゃいけませんわ。

坊ちゃん
「じゃあ、おまえは知ってるっていうのか。」

そうですねえ、あっしの知ってる女の話をしやしょうか?もっとも、女の話をする前に、男の話をせにゃぁなりませんが。

あっしがまだ、15,6の若造だった頃のことでさ。
あっしがだんな様の商船の甲板小僧をしてたことを、坊ちゃんはしっていなすったかね。

あちこち航海にでたもんですわ。こういっちゃなんだが、あっしはよく働きましたんでね、甲板長にかわいがられていたんですわ。

ベスパーに戻ると、甲板長はあっしに共をさせて、なじみの娼婦のところにいきましてな。

あっしにちょっとした酒代をくれて、近くの酒場で待たせていたんですわ。

<効果音>酒場

ある夜に、ちびちびと酒をなめながら時間をつぶしていると、やたら図体のでかい男が酒場にやってきたんですわ。

<効果音>どかっと座る音と酒を注ぐ音など

そいつは隣に座ると、一番強い酒を注文したんでさ。
潮と汗のすえたにおいのする男で、あっしはそいつを見るだけで恐ろしくてね。

目を合わせないようにしてたんですが、そいつがわしの頭をぽんぽんと叩きましてね。

こづかい銭をやるから、使いをしろというんですわ。


<効果音>お金

あっしは、そりゃあびっくりしましたよ。男があっしの前に、金貨を積み上げたんじゃ。

男は、金貨の半分はやるから、半分を、ある部屋で死んでいる女の葬式代として届けろというんじゃ。

男のシャツの袖口が、血でぬれてましてね。死んだ女ってのは、男が刺して殺したんだと、ピンときましたね。

逃げたらあっしも刺されるんじゃないかと思いましたわ。

それでも、目の前に詰まれた金貨は、無視するには惜しくってねえ。


頼まれてやってもいいけど、わけを教えてくれないならやらない、といったんですわ。

男は、またわしの頭をぽんぽんと叩きましてね。

ひとりくらい、わけを知っている奴がいてもよかろう、と話してくれたんですわ。





たいていの海の男には、兄貴分のような男がいましてね。一人前になるまでに、なにくれと同じ船で世話をやいてくれた、海の兄弟なんですわ。

一人前になると、違う船に乗り疎遠になりますが、会えばいつでも楽しく飲んだくれる兄弟ですわ。

それと、海の男は大抵そうなんですが、立ち寄る港には決まった女がいるもんでね。

男には、ベスパーに寄るたびにかわいがっていた娼婦と、いい仲になったそうで。男は本気になりましてね。娼婦と所帯をもとうと思ったそうでなんですわ。

娼婦をたずねるときは、先触れをするのが普通なんですが、この男舞い上がっちまって、いきなり、柄にもない花束なんぞをもって、娼婦のところへいっちまったんですわ。

まあ、ご想像通り、ほかの客が居たわけなんですが、これがねえ。兄貴分だったんですわ。しかも、兄貴分も本気で娼婦にほれてたそうで。

兄貴分がライバルってんで、男は身を引いて、しばらくベスパーを避けてたようなんですがね、忘れられなくて、もう一度娼婦を訪ねたんですわ。



娼婦は男をみるなり、しがみついて、泣き出しましての。

娼婦
「あいつ、行っちゃった。血を吐く病にかかったから、西の果ての死者の国に行くって、もう帰ってこないって。あんたと幸せになれって言って、あいつ、行っちゃった」

男は面食らいましたよ。男にとって兄貴分は、そりゃあ大切な海の兄弟だったんですから。

娼婦
「あいつを愛してるのに・・・・」


娼婦を支えた男の胸で、娼婦はまっすぐに顔をあげて、男に言ったそうですよ。




娼婦
「あたしはあんたも愛してる。あんたはあたしを愛してる?」


<効果音>ガラスが割れる音、破壊音、どかどかと足音、ドアが乱暴に開閉する音

そのときの娼婦の顔が、人生の中で一番怖ろしかったと男はいったんじゃ。

愛しているなんていわなければ、刺し殺したりしなかったのに、とも言っていましたわ。

男は、これから兄貴分を追って、死者の国へ向かうのだと言って席を立ったんじゃ。

兄貴分に、娼婦がどんなにひどい女だったかおしえてやるんだと。

兄貴分の情に免じて、葬式の手配はしてやったと報告するんだと。

あっちで兄貴分と酒を飲むのが楽しみだと言った男の顔は、晴れ晴れとしてましたよ。


<効果音>お金

男はもう何枚か金貨を放り投げると、グラスを空にして、でていきやした。

あっしはどうしたもんかと思いやしたが、とりあえず金貨を拾って、甲板長がことを終わらせて戻ってくるのを待ったんですわ。

甲板長は娼婦と飲みなおすつもりで、一緒に酒場にきやしてね、あっしがことの次第を話すと、場所をきいた娼婦が真っ青になりましてね。なんと娼婦同士が友達だったんですわ。

<効果音>ばたばたと走り回る音

それからはまあ、大変な騒ぎですよ。


ところが、刺された娼婦はムシの息ですが生きていましてね、女ってのは強いもんですなあ。びっくりするほど血が流れているのに、痛いやら苦しいやらより先に

娼婦
「あいつ・・・・・・許さない・・・・・」

と、きたもんだ。

傷がいえて来たと思ったら、

娼婦
「どっちの男も本気で愛してたわよ。なのにあいつら、ふたりそろって、あたしをじゃけんにしやがって・・・・・。絶対許してなんかやらないんだからね!」

と、こうですよ。まったく女ってのはねえ・・・・・。



坊ちゃん
「ひどい女だな。」

とんでもない、捨てられても刺されても、それでも待ってるとか、かわいいったらないでしょうが。さすが3人の男をとりこにするだけのことはありますわ。

坊ちゃん
「3人?だれだ3人目は」

へっへっへ・・・・・・あっしでさあ。

坊ちゃん
「ジジイ?!」

いやあ、あいつは10も年上なんですがね、つきあいで見舞いにいったりしているうちにですね、まあその、いろいろあったんですわ。

坊ちゃん
「ジジイより10歳も上なら、いい加減ババアじゃないか・・・・・おい、まて・・・・。まだ生きてるのか!?」


いやあ、それがますます元気で。

病気だからって面倒もみれない女だと思ってたのか、刺されたからっていつまでも恨む女だと思ってたのかって、思い出してはえらい剣幕でね。

死者の国に追っかけていくって、ぐずるんですわ。

まあ今はあっしがいますんでね、行くときは一緒にねって、手を握ってやると、おちつくんですわ。

ほんとにかわいいやつですわ。

坊ちゃん
「やめろ!! 気持ちが悪いぞ!!」

坊ちゃん、だから坊ちゃんはわかってないんですわ。

女は本当に愛したら、何人だろうが絶対に手放そうとしないんですよ。

だから、おいて行かれた坊ちゃんは振られたんだって、何度も申し上げているわけで・・・・・・・

坊ちゃん
「ジ、ジジイ、もしかしてそれ、慰めているつもりか・・・・・?」

あたらしいお相手をみつけたほうがいいですと、申し上げているんですよ。


坊ちゃん
「お・・・・・ま・・・・・、わ・・・・・わかった。考えてみる・・・・だからジジイはもう、しゃべるな。黙ってゴンドラを動かしていろ・・・・」

へいへい、あっしは上等な船頭ですからね、おっしゃるとおりにいたしますよ、上等なゴンドラは、上等な動きをしやすからね!ほら、あっちのきれいなお嬢さんたちのほうに、寄せますよ。手のひとつも、振ってごらんなさい、それが男ってもんですよ、坊ちゃん!

<効果音>若い女の子のきゃーきゃーうれしそうな声
 



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(あとがき)

第三話ですが、放送は4回目になっています。

初期スタッフが事情により参加でできなくなり、セリフを削除し脚本を書き直した都合です。

その代わりといってはなんですが、新しいスタッフに参加していただき、その演技力に旧スタッフがあわてふためいたという裏話があります。

新規スタッフは、UO黎明期からのプレイヤーで、その思い出を漫画で表現している有名な方です。

自分でもその方のHPで漫画を読んで、すばらしい話に感動していたので、このような形で知り合いになったことが運命の奇跡としか思えません。

実はこの話が、一番最初に思いついた作品なので、機会があれば本当にやりたかった形でやりたいという気持ちもあります。

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再放送をご希望のかたはコメントするか拍手をぽちっとしてください。

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