船頭の話 第四話 「たたずむ女」

船頭の話 第四話 「たたずむ女」
             原作脚本:ジニー

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「あー!ムーングロウであっしが出会った女の話をしましたっけ?
あっしより醜い奴は居ないって言うんですぜ。なに、つまらん話でさ」

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<効果音>波音

船頭
「わしの若い頃の話ですわ。その女は、真っ白なドレスを着てましてね、港の桟橋に毎日立っているんですわ。ずっと船がはいってくるのを待っているようですが、船が入っても、目当ての相手がいないのか動かないんですわ。ただ毎日ずっと、海のほうをみながら、立っているだけなんですわ。
気になりましてね、つい声をかけたんですわ」


あら、あなた、みない顔ね。最近ムーングロウにきたの?ふーん。
ああ、ここは狭い島だから、よそ者はめだつのよ。特にあなたのように顔が醜い船乗りさんはね。


「ここはおかしな街だな。女たちは、俺の顔には傷ひとつ無いって言うのに、口をそろえて、醜いといいやがる。それなのに、顔中やけどのあとが残っている男のことは、かっこいいとか、美男子とか、おかしいだろ?」



ここはムーングロウだもの。ほかとは違うのよ、ふふふ




ほかの島のことは知らないわ。わたしは生粋の、ムーングロウ生まれの、ムーングロウ育ち。

ムーングロウは気候が豊かな素敵なところよ。

シーマーケットあたりからくる、暖かい海流のおかげですごしやすく、ダガー島からの冷たい海流で、冬は少しだけ雪が降る。

ムーングロウ島は人口は少ないので、みんなそれなりに顔見知りよ。

本格的な魔法の修行なら、ウインドまでいくのでしょうけれど、その前にまずムーングロウで、魔法の基礎を学ぶのよ。

街の中を含めて、4箇所の魔法屋で、師匠になる魔法使いに出会えるはずだわ。
ライキュームまでいけば、書写を学ぶこともできるし、なによりも大切なのは、望遠鏡で星の運行をみることができるのは、ムーングロウだけってことよ。

環境がよいので、ここで生まれたものはみんな、ちょっとした魔法は使えるの。

島の外からくる、魔法使い志願者は、たいていはムーンゲートからやってくるの。
そしてすぐにどこかの魔法使いのところの住み込みとなり、見習い魔法使いのローブをまとうわ。

ムーングロウ島では、あなたみたいな船乗りの格好の人はね、見習い魔法使いとは扱いが違うのよ。


<音楽終了>森を流れる川


ふふふ、本当にあなた、醜いわねえ。


「そりゃあ、俺は美男子ってわけじゃないさ。だからって十人並みだろう?醜いっていわれるほど、ひどくはないだろう」


わかってないのねえ。

わたしが知っている、男らしい船乗りたちはみんな、顔にやけどのあとがあるわ。どうしてか、あなたにわかるかしら。


「知らないね。よっぽどへまばっかりしていたんじゃないのか」

ふふふ、ムーングロウの港を、あなた、ちゃんと知っているかしら。


「知っているも何も、ここは使えない港だ。入り口に水エレが群がっているからな。あんなところを通るなんてごめんだね。」

そうよ、だからまっとうに港に入ってくる船の船乗りはみんな、水エレを戦わなくてはならないの。立派に戦った船乗りほど、たくさんのやけどをおっているのよ。

水エレに受けた傷は、魔法でも治癒が遅いのよ。治る前に、次の傷を負ってしまうから、傷はどんどん増えてしまうの。

あなたみたいに、顔に傷ひとつない船乗りは、港ではないところから上陸した船乗りって、まるわかりだわ。

ムーングロウの女はね、船乗りに関しては、傷の多い男を大事にするのよ。


「どうしてわざわざ危険をおかさなくちゃならないんだ。水エレがいない場所で荷おろしすれば安全じゃないか」

ムーングロウ島はね、生産物が少ないのよ。
取れるのは綿花と鹿の皮と、農産物くらいしかないの。鉄も、特殊な皮も素材も、すべて島の外から届くのを待っているのよ。

港以外で荷おろしをして、陸路で届いた荷物には、経費が上乗せされるから、やっと届いた商品でも価格が高すぎて、手に入らない人も多いのよ。

だからね、港に直接届けてくれる船と船乗りは、大歓迎なの。

危険をおかして、傷を負ってもなお、港へ入ってくれる勇敢な船乗りが、ムーングロウの女たちの羨望のまとなのよ。

船乗りのくせに、あなたみたいに安全だけ求める男はね、この街ではまったくもてないのよ。


「高くなろうが荷物が届くんだからいいだろうが。だいたい、俺が醜いっていうなら、なんだってあんたは俺にかまうんだ。」


ふふふ、どうしてかしらね。あなたが、わたしの恋人に似ているからかしらね。


「なんだ、あんたのいい人は、俺みたいな醜い男だったのかよ」

誰だって最初は、身体に傷なんかないわ。幼馴染のあの人は、街のために、どんなにたくさんの水エレがいたって、勇敢に船を港につけてくれていたわ。私のつたない魔法では、傷がなかなか治らなくて・・・・・。しまいにはいつも頭巾をかぶらないといけないくらいに、顔に傷をおってしまったわ。


「それがあんたがいうところの、美男子なんだろう?」

ええ、そうよ。あんなに美しく、勇敢で、強い心の人はいなかったわ。あの人は死ぬまで勇敢だったわ・・・・。


(回想の海戦)

<効果音>破壊音

船員「船長!船長ー!今日の水エレは数が多すぎます!船が、船がもちません!!」

船長「泣き言をいうな!もうすぐ桟橋だ、街のみんなが、この荷物を待っているんだ!」

船員「左舷!被害甚大です!」

船長「こらえろ! もう少し、もう少しなんだ!」

船員「でも、でも!! うわあああ」


<効果音>破壊音


<効果音>波音




あなたは、傷を負う前のあの人に、ちょっとだけ似てるわ。


「死ぬくらいなら、生きて醜いといわれたほうが、賢いとおもうがね」




ええ、そうよね、あなたはあの人とは違う・・・・・

あの人は、愚かだったのかしら。

わたしには、わからないの。

あの人をとめたらよかったのかしら。

とめたらあの人の誇りが、傷ついてしまったのではないかしら。

わたしには、わからないの。

ただずっと、どうしたらよかったのだろうって、そればかりを思っているの。



船頭
「それっきり、女は海のほうをむいて、ひとっことも喋らなくなりましたわ。わしは黙って立ち去るしかありませんでしたわ。なに、つまらん話でしたわ。」



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(あとがき)

第四話は、放送は3回目に実施されました。

録音は先に行われていたの、初期スタッフのひとりの最後の声もはいっています。

メインMCのウィスパーボイスを堪能していただけるかと思います。

また、有名漫画家さんもドラマデビュー作ともなっており、最初から「叫び」という、過酷な要求に応えていただいて、大変ご迷惑をおかけしました。

こちらは後に、スピンオフも作成している題材です。

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再放送をご希望のかたはコメントするか拍手をぽちっとしてください。

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