船頭の話 第六話 「旅立ち」

船頭の話 第六話 「旅立ち」

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「あー! ニューマジンシアであっしが出会った女の話をしましたっけ?
正体は海賊だったんですぜ。なに、つまらん話でさ」


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今はニューマジンシアって、呼ばれているけどね。

昔はただの、マジンシア だったのよ。


そうよ、あたしはこの島で育ったの。戻ったのは久しぶりだわ。あちこち旅をしていて、やっと戻ってこれたのよ。

この花はね、お父さんのお墓にそなえようと思ったのよ。

でも、マジンシアは一度、たいへんなさいやくにみまわれて、昔の面影がまったく残っていないの。

お父さんのお墓も、どこにあったか、わからなくなっちゃった。

たぶんここいらへんが、あたしが育った、お父さんの家があった場所だわ。

せめてここに、花を供えていこうと思うのよ。

あなたは?

ニューマジンシアになってから越してきたのね?

何かの縁と思って、お父さんの供養代わりに、あたしの思い出話につきあってくれるかしら?


(回想)**************************************************


物心ついたときから、あたしにはお母さんがいなかった。

お父さんは宿屋を経営していて、なにからなにまで、ひとりできりもりしていたわ。

あたしはお父さんを手伝って、家事を覚えたの。

いつかお婿さんをもらって、お父さんの宿屋を継ぐのが夢だったわ。

宿屋のお客さんは、旅の女の人が多かったわ。

お客さんたちは、みんな幼いあたしを可愛がってくれた。


「お客さんにはあんまり甘えてはいけないよ。別れがつらくなるからね」

お父さんはいつもそう言っていたわ。

でも、何度も立ち寄ってくれるお客さんもいたから、あたしは別れがつらいと思ったことはなかったの。


何度も再婚話があったけど、お父さんは、お母さんを忘れられないからといって、全部断っていたわ。

お父さんにお母さんって、どんな人だったのって聞いたことがあるの。


「やさしくて強い女性だったよ。

彼女と過ごした短いときは、一生に変えてもいいくらい幸せな時間だった。

もちろん、お前と過ごす毎日も幸せだけどね」

お父さんはとても優しい目をしてそう教えてくれたわ。




あたしが16になったころ、お父さんが身体を壊したの。

だんだんと体が動かなくなって、その分あたしが宿屋の仕事をかわったわ。

なじみのお客さんが多かったので、あたしが至らなくても、宿屋がやっていけなくなることはなかったわ。

お父さんがやがて寝たきりになって、介護と宿屋の仕事で、忙しかったけれど、つらいとは思わなかったのは、やさしいお客さんたちのおかげだったわ。

あたしが18になったころに、お父さんは亡くなったの。

未婚のまま、あたしは宿屋のおかみになったので、お婿さん候補がわんさかやってきたわ。

誰かと結婚して、宿屋を続けるのが一番いいと、あたしも思っていたんだけどね。

誰とも決めかねているうちに、あの男がやってきたの。


親も無く、財産もなく、どこからか流れてきた無法者、というのが正しい表現だわ。

宿屋という財産もちの若い娘ひとり、脅せばどうにかなると思ったんでしょう。

求婚を断ったら、真夜中に押し入ってきたのよ。

宿泊していたのは、女客ばかりと調べて、刃物をもってあたしを脅したわ。


「おとなしくしな。言うことを聞けば、あんたも客も痛い思いをしないですむんだぜ?」


あたしは怖ろしくて、動くことも口をきくことも、できなかった。

でも男が、逃げようとしたお客さんに、切りかかろうとしたときに、当たり前のように体が動いて、もみあいになったの。

お客さんを守らなくちゃ! って一心だったわ。


<効果音>どたんばたん


女客
「やめな、チンピラ! お嬢を離しな!」



あっという間に、男は女性客たちにこてんぱんにされて、縄でしばられてしまったの。

あまりに手際がいいのに、あたしはびっくりしてしまったわ。

いつもはやさしく笑っているお客さんたちが、怖い顔をしていたわ。

女客
「お嬢をひとりでおくには、ここはもう危険だ。さあ、いきましょう」

ひとりのお客さんがそういうと、ほかのお客さんもみんなうなずいたわ。


「なんだてめえら、なにものだ!」

女客
「クズは黙ってな」

あたしも男も、口をふさがれて、担がれるように宿屋から連れ出されたの。

男に怖ろしい目に合わされたと思ったら、今度はお客さんに・・・・・・

あたしは涙が止まらなかったわ。

連れて行かれたのは、港に停泊している一隻の船だった。

そのまま船は出港してしまったの。そして外洋にでて掲げた旗には、海賊をしめす骸骨がそめられていたの。


<効果音>波音
女客
「おかしら! お嬢をお連れしましたよ」


「そうかい、ご苦労だったね」


その船は、船長から船員まで、全部女の人しか乗っていなかった。そして船員のほとんどが、宿屋の顔見知りのお客さんだったの。

女船長は、縛られたままの男を一瞥すると、手下にあごで合図をしたわ。

<効果音>剣を抜く音、切りつける音


「ぐうっ・・・」

<効果音>海に男が落ちる音


男は手下のカットラスでのどを裂かれ、海に捨てられた。


あたしは、男の血しぶきをみて、震えているしかなかったわ。



「立派になったね」

あなたは、だれ?


「あたしはお前の母親だよ」


おかあ・・・さん・・・・・?



海賊のおかあさんと、宿屋のおとうさんは恋をして、生まれたあたしは、おとうさんが育てた。

お尋ね者のおかあさんは、上陸することを控えて、手下に様子をみにいかせていたと・・・・・・・

あたしは泣き叫んだわ。

信じない、身勝手すぎる、あたしを宿屋に帰して!


「あの人が死んだからには、あんたを守ることができるのはあたしだけさ。

そしていつか、あたしが死んだら、この船と仲間たちを守ることができるのは、あんただけだ。

この船はね、海賊船といっても、女の味方なんだよ。

あちこちの港で、男にひどい目に合わされた女たちを、助けて仲間に加えているのさ」

女客
「お嬢。あたしらはずっと、お嬢を見守ってきました。

お嬢なら立派に、おかしらの後を継げます。」


「あたしとあのひとの娘だ。できないはずがないよ」

勝手に話を進めないでよ!

マジンシアに返して!



<効果音>爆音

すさまじい衝撃が船を襲ったわ。

大波に揺れる船から、マジンシアを見ると、島からたくさんの黒煙があがっていた。

風に乗って、大勢の悲鳴が聞こえていたわ。

<効果音>爆音&破壊音&遠くの悲鳴





その日にマジンシアが崩壊したのよ。

そのあとのマジンシアは、魔物が闊歩するおそろしい地になってしまった。

あたしは帰ることはかなわず、海賊船に乗って旅をするしかなかったの。

そしてお母さんが尊敬できる人だとわかり、船員たちの助けもあって、海賊船の一員となったの。

マジンシアが、ニューマジンシアとなって復興しても、あたしは戻らなかったわ。

世界のどこにでも、不幸な女たちがたくさんいて、あたしはお母さんを助けて、可愛そうな女たちを救ってきたの。


「あのひとはあたしの生き方を許してくれた。あんな心の大きい人はいないよ。」

船がマジンシアに近づくことがあると、おかあさんは島のほうへ向かって、さびしそうに視線をを送っていたわ。


先日、お母さんが亡くなったのよ。

ずっと離れていたけれど、お母さんもお父さんをずっと愛していたことを、あたしはお父さんに報告にきたのよ。

女客
「お嬢! そろそろ出航しないとやばいです!」

お迎えがきちゃったわね。

<音楽>移りゆく時代  終了




女客
「お嬢! 急いでください!」

あわてるんじゃないよ、それにね、おかしらとお呼び。

話を聞いてくれてありがとう。

ニューマジンシアは、あたしの故郷とはいえないわ。

きっともう、戻ることはないでしょうね。


<効果音>波の音かぶせ

女客
「お嬢! どっちの海へ向かいますかー?」

おかしらとお呼びったら! 風の吹くほうにいくのさ、さあ、帆をあげな!

女客
「ヨーソロー!」

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(あとがき)

第六話あたりから、音響効果のこだわりがでてきました。

マジンシア倒壊のシーンなどは、いろいろな音を重ねて作っていただいています。

頼むとどんな効果音でも「ムリ」とはいわないので(言わせないわけではないですよ?)、つい期待していまい、どんどん要求がエスカレートしてくるのですがw

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再放送をご希望のかたはコメントするか拍手をぽちっとしてください。

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