船頭の話 第八話 「月光」

船頭の話 第八話 「月光」

*********************************************************

「あー! ジェロームであっしが出会った女の話をしましたっけ?
月の光が大好きだからって、昼間に寝るんですぜ。なに、つまらん話でさ」

*************************************************************



わしの乗った船は嵐にあい、ジェローム沖で沈没した。

生き残ったのはわしひとりだった。

船を失い、仲間を失い、これからどう生きていっていいのか、悲しみと不安でいたたまれなくなっていた時期だった。

夜も眠れずに、寝静まったジェロームの街を徘徊していたときだった。

ひとりの娘が、宿屋の中庭にいるのをみつけたのだ。

月がきれいな夜だった。



娘は、いくつかの大きな銀の盆に水を張って、中庭に並べていた。

なにかの儀式をしているようにもみえる姿は、人ではないように見えた。




「あんた、魔女かい?」

声をかけると、ゆっくりとわしを振り返った。


「・・・・・いいえ、私は魔女ではないわ」

娘はえらく抑揚の無い声で応えた。

深夜に男に声をかけられたというのに、びっくりするでもおそれるでもなく、その瞳にはなんの感情もこめられてはいなかった。

月明かりに浮かび上がった娘の顔は、透けるように白く美しかった。


「あんた・・・・・幽霊かい?」


「・・・・いいえ、私は幽霊ではないわ」


妙な娘だ。

しかしなんとも美しい。


「あんた、女神か?」

わしは少しおかしくなっていたんだろう。この娘に何かしらの救いを求めていたのかもしれない。


「・・・・いいえ、わたしは・・・違うわ」

娘が薄く笑った。


「あんた、なにをしてるんだい」


「月の光を集めているの。ほら、この水盤に映った月を見て。なんてきれいなんでしょう」

水盤に映った月は確かに美しかったが、光を集めるとはどういうことだろう。

わけがわからず黙っていると、なんと娘が衣服を脱ぎ始めた。


「ななな、なにをしているんだ?」

娘はかまわず裸になってしまった。顔と同じにすけるように白い肢体が月光に照らされてあらわになった。


「月の光を浴びるの。私には必要なことだから。」

恥じらいも戸惑いも無く、娘は両手を広げて面を月に向けると目をつぶった。

その姿は神々しくもあり、キチガイじみてもいた。

どれほどの時間をそうしていただろう。

娘は両手を胸のまえで祈るように組むと、異国の言葉をつぶやいた。

すると、水盤から光がたちのぼり、娘の胸に吸い込まれていった。

夜明けが近いようだった。

娘は呆然とするわしが、まるでいないかのように衣服をまとうと、水盤をかたずけはじめた。


「あんた、本当に魔女じゃないのか?」


「・・・・・いいえ、私は魔女ではないわ。もう、休まなくては。さようなら」

娘は無感動にそう応えると、水盤をかかえて宿屋に入っていった。





不思議な娘がいなくなっても、わしはなんとなくその場所にとどまっていた。

朝日が昇る頃に、宿屋に朝餉の煮炊きの気配がしはじめた。

宿屋のおかみが、中庭にでてきて、こんな朝早くに何をしているのかとわしを問いただすので、さっきまでここにいた娘と話をしていたというと、おかみは興味深々でどんな話をしたのかと聞いてきた。

娘は半月ほども逗留していて、昼間は寝ていて、夜になるとおきだして中庭で過ごしているということだった。

ほとんど会話もないが、宿に迷惑をかけるでもなく、払いも前払いでもらっているので問題はないのだが、とおかみはいった。

ただ、宿でだす食事を断るので、夜中に食べていたのかと心配をしていた。

娘はなにをしていたかと聞かれたが、まさか素っ裸になっていたともいいずらくて、月の光を楽しんでいたとだけ言っておいた。





次の日の夜も、月がきれいに出ている夜だった。

わしは娘に会いにいった。

娘はやはり、水盤を広げて、裸になって月の光を浴びていた。



「宿屋のおかみが、あんたが飯を食わないと心配していたよ」


「私には食事は必要ないの。月の光があれば十分なの」



娘からはなしてくることはなかったが、問いかければ応えは返ってきた。


「なんのためにそんなことをしているんだ?」


「しなくてはいけないことをするため。月の光は私に力をくれる」



「なにをしなくちゃいけなんだ?」


「・・・・・罪をつぐなうのに必要なこと・・・・・」



「どんな罪をおかしたんだ」


「妹たちを見殺しにした罪」

わしはそれ以上は聞けなかった。

ひとり生き残ったわしは、それを自分の罪のように感じていたからだ。

船が難破した嵐の夜が、わしの脳裏になんども浮かんで、眠れない日々を繰り返していた。

嵐も難破も、わしの責任ではないのはわかっていたが、誰一人として救うことができなかったわしは、そのことが罪のように感じる日々を送っていたのだ。

この娘もそうなのだろうか。

女だてらに、どんな責任を感じているのだろうかと思うと、わしは娘にさらに興味がわいた。

わしは毎夜、娘のもとに通うようになった。

ぽつぽつと、わしが自分が罪と感じていることを話しても、娘からなにかをいってくることはなかった。

問われない限りは、娘は無言で、ひたすらに月の光を浴びていた。

ピクリとも動かない娘の姿は、女神の彫像のようにも見えた。

わしはその姿にむかって、ざんげしていたのだ。

失った仲間に、先に逝かせてすまなかったと、わびて泣いて、それでも娘はただじっと、神々しい姿でたっているだけだった。




数日後の新月の晩だった。

その晩は、月がでていないからだろう。
娘は水盤を並べていなかった。



娘は中庭をでて、どこかに出かけようとしていた。


どこにいくのかと問うと、娘は応えた。


「今夜は新月。約束の夜だから」

娘が飛ぶように走り出した方向には、ジェロームの墓場があった。

ジェロームの墓場は、夜になるとゾンビやスケルトンの姿になった亡者がうろつくので、丈夫な鉄格子でかこまれて、入り口には鍵をかけられている。

<効果音>鉄の扉が開く

入り口に手をかけると、鉄の扉がやすやすと開いた。

娘はすでに墓場に入り込んでいて、亡者の群れにかこまれていた。

<効果音>ゾンビ

娘は、胸元で祈るように手を組み、異国の言葉を唱えていた。

このままでは娘が亡者たちに殺されてしまう、むりやりにでも墓場からもどらせなければ、と、墓場に踏み込んだわしにも、亡者たちもむかってきた。

そのときはじめて、聞かれても無いのに娘が口をきいた。


「なぜきたの。私の姿をみてはいけないのに」



娘のからだが、いきなり光り輝き始めた。

月の光とおなじ、あわく輝く娘の姿が、小さく、小さく縮まっていき、そこに現れたのは・・・・・・背中の透明な羽ではばたく小さな妖精だった。


小さな妖精は、両手を広げると小さく息を吐いた。



妖精の体から月と同じあわい光が勢いよく飛び出したかと思うと、光を浴びた亡者たちの体が土くれとなり崩れていった。

<効果音>光が発射される&くずれる

わしを襲おうとしていた亡者も、すっかり崩れてしまい、まもなく妖精の輝きがきえると静寂と闇が訪れた。




<効果音>人が倒れる音

なにかが倒れる音がした。

闇の中で目をこらすと、娘が倒れていた。

助け起こすと娘が弱々しくつぶやいた。


「まだ・・・・・まだ足りないのですね、お姉さま・・・・・」

そのまま気を失った娘をかき抱いて、わしは墓場を後にした。

娘はからだは死人のように冷え切っていた。

墓場の扉を閉めたとき、あらたな亡者が生まれた不気味な声が聞こえていた。

<効果音>ゾンビの声




娘を宿屋に担ぎこんだころには夜が明けていた。

すでに起きていたおかみたのみ、わしは娘に付き添って昼を過ごした。

娘はこんこんと眠り続け、夜になると目を覚ました。


「あなたはなぜここにいるの?」


「墓場にあんたをおいてくるわけにはいかないだろう。亡者に食われてしまう」


「わたしを助けたの?」

娘はしばらく黙ったあとで、いつものように無表情にではなく、申し訳なさそうな顔をした。



「あなたは私の本当の姿をみてしまった。あなたの運命は私とつながってしまったわ」


「それならあんたのことを話してくれ。あんたと運命がつながったのなら、俺には知る権利があるだろう」


「わたしを知ったら、あなたは私を嫌いになるかもしれない」

それは、はじめてきいた、人間らしい言葉だったと思う。


「わたしはイルシェナーの霊性の森の妖精。

霊性の森はとても清浄で穏やかで・・・・・・そして退屈だったわ。

わたしは妹たちを、冒険に誘ったの。

亡者が巣くうダンジョンへの、ちょっとした遠足のつもりだったわ。

妹たちも、はじめてみる闇の世界を、おそれることもなく悠々と進んでいったわ。

でも、私もいったことがない闇の奥にとんでもない悪魔がいたのよ。

黒閣下とおそれられている悪魔に、みんな殺されてしまった。

私はたったひとりで、まだ生きていたかもしれない妹たちをみすてて逃げ帰ったの。

そしてお姉さまに・・・・・・罰を与えられたの。

ジェロームの墓場を浄化するまでは、もどってはいけないの。

妖精にとって、月の光は力の源だから、毎晩月の光を浴びて、集めて、新月の夜に、闇に集う亡者を倒さなくてはいけないの」




娘は苦悩に満ちた顔をしていた。

月の光を浴びていたときの神々しい姿とはちがい、か弱い娘の顔をしていた。


「お姉さまは、わたしの本当の姿をみた人間がいたら、その人も一緒に亡者を倒さなければいけない、といったわ。

そうしなければ、わたしが浄化を果たせずに死んだときに、一緒に死んでしまう呪いをかけたのよ」

娘が妖精になった姿をみたあとでは、わしは娘の言葉を信じるしかなかった。

それに、いつもよりも弱く、はかなげに見える娘の、しなければならない試練を思うと、見捨てるわけにはいかなかった。



次の新月にむけて、毎晩娘は月の光を集め浴びた。

娘はよく、自分のことを語るようになった。


「霊性の森には、自然しかないの。樹齢を重ねた大木。露にぬれた下草。動物たちもおだやかで、悪いものはいっさいいないの。私たちは、木々のてっぺんまで飛んで、思う存分月の光を浴びたわ。ここは人間の街だから、どうしても光の効果が薄れてしまう。早くふるさとに帰りたいわ」

わしは人がほとんど住んでいない場所へ、娘を連れ出そうと考えた。

ジェロームは三つの島で形成されていて、そのひとつには放牧場があり、ほとんど人間がいない。

ところが娘は、放牧場いきのテレポーターを通ることができなかった。


「お姉さまの呪いなの。わたしはテレポーターもゲートも使えない」


「だったら船でいこう」

わしが小船をかりてきて、娘をのせて海をわたった。

夜の航海だが、島を渡るくらいなら船乗りのわしには造作もないことだ。

イルシェナーには船がないという。


「私たち妖精は、水の上は飛べないの。船に乗るのはすてきね。海の上の風はとても気持ちがいいわ」

海かぜにあおられて広がる髪が月明かりに輝いて、羽のようにみえた。


放牧場につくと娘はいつものように衣服を脱ぎ、月の光を浴びた。


「ここは街のなかよりも清浄だわ」

いつもと違うのは、月に向けた顔に笑顔が浮かんでいることだった。

娘はもはや彫像ではなく、生きた娘としてたたずんでいた。



「なあ、もし俺が死んだら、あんたはどうなるんだ?」


「どうにもならない。私の運命はあなたの死とは関係しない」


「俺はまきこまれ損ってことか」


「ええ、そうなるわね。ほんとうに ごめんなさい」

娘のほほがうっすらと紅色に染まっているように見えた。

娘はびっくりするようなことを言った。


「恥ずかしいわ。あっちを向いていて」

わしはあわてて目をそらし、娘が服を着て声をかけてくるまで、夜空の月を眺めていた。

それからは、わしは娘の隣で、裸の娘をみることはせずに、一緒に月だけを見る夜を過ごした。

それまでひんやりと冷たく感じていた月の光が、ほんわりと暖かく感じるようになっていた。






次の新月の夜がやってきた。

娘とわしは、墓場に向かった。わしも亡者と戦うために、武器をもっていった。


「力が十分ではないかもしれない。でもいかなければならない」


「わかっている。今度は俺も戦う。きっと大丈夫だ」

墓場の敷地に入ると、亡者たちがわらわらと、娘とわしにむかってきた。

<効果音>ゾンビとの戦闘

娘は小さな妖精の姿になり、光を放ち始めた。

次々と亡者が土くれになっていくなかで、わしに向かってくるゾンビが、腐った息をはきながら声を発した。

その声は「アニキ」と聞こえた。

ゾンビがまとった服と背格好に見覚えがあった。

嵐で死んだわしの弟分だったのだ。

妖精の光が弟分のゾンビにむかったとき、わしはゾンビをかばってしまった。


「だめだ、こいつを殺すな」


「なぜ?もう死んでいるわ」


「こいつを2度も殺したくないんだ!」

しかしそれは無駄でバカな行いだった。弟分のゾンビはわしに噛み付いて食おうとしてきたのだ。

<効果音>ゾンビがかみつく


「だめ!」

妖精は光をはなち、ゾンビを土くれにした。

わしは傷から暖かい血がどくどくと流れていくのを感じていた。たぶんもう助からない。


「俺も死んだらゾンビになって、あんたに浄化されるのかな」


「だめ、死んではだめ」

<効果音>光

妖精が強い光をはなった。

わしが出血と痛みが消えるのを感じた。

すると妖精は娘の姿にもどって、わしに覆いかぶさった。その瞳には涙が浮かんでいた。


「俺のために力を使い果たしてしまったのか?なぜ?」


「あなたがいなくなるなんてダメ、だめなの」

<効果音>ゾンビ


倒れているわしと、覆いかぶさっている娘を亡者の群れが囲み、いまにも引き裂こうとしていた。


<効果音>光

新月で闇夜のはずなのに、巨大な月が天空に現れた。

<効果音>ゾンビの断末魔

強い月の光を浴びた亡者の群れが一瞬で土くれとなり崩れていった。


<効果音>妖精の羽音







娘とわしが、月をみあげると、その中心には薄い羽を羽ばたかせて宙に浮く巨大な妖精がいたのだ。


「お姉さま・・・・」


「あなたの思いが私を呼んだ。あなたがその男を助けたいと思ったように、わたしもあなたを助けたい」


「わたしの罪は消えません。妹たちは死んでしまった」


「そう、罪は消えない。あなたは森にかえりたい?」


「かえりたい・・・・でもこの人のそばにもいたいのです」


「つぐないのために、あなたは、まだ、森には帰れない。でも私は、あなたに人間の命を与えましょう。人間としての命をまっとうしたときに、あなたは許されるでしょう。」

<効果音>妖精の羽音


「あなたの幸せを祈っているわ」

姉と名乗る妖精が光り輝くと、天空の月とともに消えて、闇がおとずれた。





わしと娘は墓場をあとにしたが、支えた娘の体が熱く火照っているがわかった。

娘はそのあと熱をだして長いこと寝込み、熱が下がったのは次の新月の夜だった。

娘は記憶を失っていた。

わしは宿屋から娘をひきとりやがて所帯をもった。



妻となった娘は、人間らしく、昼間に起きていて夜は眠る生活をするようになった。

あいにく子供はできなかったが、人間として新月の夜に生まれ変わった妻をささえて生きるのが、わしの生きがいとなった。

妻は眠る前に月をみあげては、両手を祈るように胸元で組んではうっとりとしていることはあっても、異国の言葉をつぶやくこともなく、ただ、お日様よりもお月様のほうが光がやさしいから好きとだけ言っていた。


「なぜかしら。月をみると、とても懐かしい気持ちになるの」

透き通るようだった白い肌も、日の光にあたるようになって健康的な肌色になり、普通に食事もするようになったので、年老いてふっくらとしたりしましたが、ほどほどに生きて、わしよりも先に、亡くなりました。


埋葬した晩に、墓場に目をやると、淡く輝く光の玉が、月に向かってゆっくりと昇っていくのがみえた。

妻は人間としての命をまっとうし、やっと妖精の森にかえっていったのでしょう。

わしが幸せであったように、妻も幸せであったのだと、わしは信じたいのです。

妻との穏やかな思い出と共に、わしは余生も幸せに過ごすことができるでしょう。


<効果音>妖精の羽音



****************************************
(あとがき)
第八話は暗めのお話です。でも個人的には好きだったりします。

今回は、月の光を音で表現していただきまして、音響効果担当にはたいへんお世話になりました。

ただ・・・・・・ゾンビの効果音があるじゃないですか。

なんかこれで、音響効果担当がなにかに目覚めてしまい、あとあと大変なことになるのでしたが、それはまたあとのお話。


******************************************************

再放送をご希望のかたはコメントするか拍手をぽちっとしてください。

******************************************************




船頭の話 第七話 「しゃべる犬」

船頭の話 第七話 「しゃべる犬」
             原作脚本:ジニー

*********************************************************

「あー!スカラブレイであっしが出会った男の話をしましたっけ?
「自分の犬は頭がいいからしゃべるんだ」ですとさ!」

**********************************************************



その男は、街で雑貨屋を営んでいました。
堅実な商売をして、裕福だということでしたが、独り身で、黒い犬をつれあいのように可愛がっていました。


男はいつも、決まった定食屋で夕飯をとってましてね。

そこのおやじにも気に入られて、よく一品サービスされたりしてました。

おやじ
「あんた、はやくいいお嫁さんをもらいなさいよ。

いつまでもおいらの飯じゃあね。

それに不自由なこともいろいろあるだろうよ」


「いい娘がいたら紹介しておくれよ。

そうさな、おやじみたいに、うまい飯を作ってくれる娘がいいな」

おやじ
「料理だったらおいらが仕込んであげるよ。

ああそうだ、あんたのつれはまた外かい?」


「ああ、外で待っているよ。

いつものあれ、頼めるかい?」

おやじ
「ああ、ちゃんと作ってあるよ、ほら、もっていってやりな。」

男はおやじから皿を受け取ると、店の外にでました。

店の外には、黒い犬がおとなしく待っていました。


「ほら、おまえの飯だぞ」

犬は尻尾をふって、男の、よし、という合図があると静かにあたえられた飯を食べるのでした。

おやじ
「ほんとうに行儀のいい子だな」


「ああ、こいつは頭がいいからな。

時々言葉もしゃべるんだよ。

もっとも、聞き取れないがね。」

男がいうには、おかえり、とか、がんばれ、と不自由な犬の舌でしぼりだすように話そうとしているのだそうです。

犬や猫には、たまにそういうことができる器用な子がいますからね。

男がやさしく犬の頭をなでると、犬は食べているのを中断して、男をじっとみてまたしっぽを振るのでした。





ある日、定食屋に、おやじの娘が帰ってきました。

菓子職人になるといってよその町に修行にでていた娘が、修行を終えて戻ってきたのでした。


おやじ
「娘は、定食屋より菓子屋のほうをやりたいっていうんだがね。

おいらが元気なうちは、定食屋はやめないよっていってるんだがねえ。

菓子より飯のほうが大事に決まってるからねえ」




「おとうさんの料理は最高だから、わたしはお菓子で最高のものをめざすのよ」

おやじ
「生意気いいやがって。まだ娘のくせにおやじのおいらとはりあうとはね」

そういいながらも、おはじは娘をほこらしく思っているようでした。


「うちの雑貨屋で、菓子を売ってみるかい?」

男の申し出があって、娘は焼き菓子などを男の雑貨屋で売るようになりました。

これが評判がよく、男の雑貨屋はますます繁盛するようになりました。

雑貨屋が忙しくなったので、娘は男の手伝いをして、店に通う日が多くなりました。

素直でよく働く娘と、堅実でやさしい男は、当然惹かれあうようになりました。


その頃から、男の犬が、定食屋の中に入りたがるようになりました。


「だめだよ、おまえ。」

男が外で待つようにいいきかせても、がんとして入りたがります。

おやじ
「いいよいいよ、その子は行儀がいいからね。

かまわないから入れてやりな。」

おやじの許しを得て、店に入った犬は、男の傍らでおとなしく座っているのですが、ずっとおやじの娘を目で追っているのでした。

おやじ
「おやおや、うちのむすめが気になるんだね」

すると娘がいいました。


「わたし、その子嫌われているのかしら」

娘がいうには、雑貨屋を手伝っていても、ずっと目で追われているそうなのです。

その目が娘を品定めしているようでこわいと。

そういえば、娘が犬の頭をなでても、尻尾をふるわけでもない、かといって、うなることもないのですが、目線をそらすことがないのでした。


「わたし、その子がちょっと怖いの」


「ちょっとやきもちをやいているだけさ。

こいつはあたまがいいから、あんたを傷つけるようなことはしないよ」




ある日のこと、男と娘が雑貨屋で仕事をしていると、強盗が入りました。

男に殴りかかった強盗に、犬が襲い掛かりましたが、強盗がもつこんぼうで逆に殴られてしましました。

なおも犬を打とうとする強盗から、犬を守るように娘が覆いかぶさりました。

男が強盗に突進して、なんとか押さえ込むことができて、娘と男はかすり傷ですみました。

しかし、犬の傷は深く、獣医にみせて安静にして栄養のあるものを与えるようにと、男と娘で、かいがいしく看病をしました。


男と娘の結婚が決まったのはそのすぐあとでした。

すると、まだ傷がいえきっていないというのに、男の犬がいなくなってしまったのです。

男はほうぼう探し回りましたが、みつかりません。


「あの犬は、俺をひとりで育ててくれたおふくろが死んだあとに迷い込んできたんだ。

天涯孤独になった俺に、いつも付き添ってくれた相棒なんだ」

男が動揺する姿を見て娘も一緒に、必死で犬を探しましたが、とうとう見つからないまま婚礼の日がきました。


「あの子がもどってこないなら、婚礼を伸ばしてもいいのよ?」


「いや、これからは、俺の相棒はお前だからな。そのかわり、黙って俺のところからいなくなるなよ」

ふたりは予定通り、婚礼をあげることになりました。

祭壇の前で、永遠の愛を誓うそのときに、やつれて汚れた男の犬が、ふたりの前によろよろと近寄ってきました。

そして二人の前でぱたっと倒れたのです。

男は、あわてて犬を抱き上げました。

犬は半目を開けて、男をじっとみると、はっきりと、人間の言葉を話したのです。


「その娘の修行先で調べてきたよ。

その娘はほんとうにいい娘だ、一生大事にしてあげなさい」

女の声でそう言うと、犬は静かに目を閉じて、動かなくなりました。

男は犬を抱いたまま、つぶやきました。


「おふくろの声だ・・・・・」

祭司が祭壇からおりて、そっと犬の頭に手をおいていいました。

祭司
「安心されたのですね。あなたのお母様は、今やっと安らかになれたのです」

娘は婚礼の衣装が汚れるのもかまわず、男と一緒に犬を抱きしめました。

すると犬が息を吹き返し、弱弱しいながらも男と娘の顔を交互にみると甘えるようにきゅんきゅんと鳴きました。


それが魔法だったのか、ほかのなにかの力だったのかはわかりませんが、男の犬には、死んだ母親が、宿っていたのです。


男と娘は、犬を抱いて婚礼を終え、弱った犬の看病をふたりで勤めました。
元気になった犬は、若夫婦と一緒に暮らしていましたが、以前のように行儀がいいというということはなく、普通の犬として、夫婦に可愛がられました。

とまあ、それで終わればいい話なんですけどね。




どうやら男の母親はまだ成仏していないみたいなんですよ。

なんでも今度は、しゃべるカラスが住み着いているそうで・・・・・・。

これがもう、自由自在にしゃべりまくっているそうですわ。


カラスの舌は、犬よりは自由に動くらしいですね。

<効果音>カラスの鳴き声

カラス
「ちょっと、息子はその料理はきらいなんだよ!

もっとましなものを作りなさいよ!」


「いーえ、お母様。わ・た・し・が・作れば美味しいっていってくれてますから!」

カラス
「なんだい、嫁のクセに生意気だね!」


「カラスの嫁になった覚えはございません!」

カラス
「なんてこと言うんだいこの子は!」


「なんだい、またおふくろともめているのかい」


「あなたからも言ってくださいよ、お母さんたら・・・」


「おふくろ・・・・」

<効果音>飛ぶ音



「あ、にげた・・・・」


<効果音>カラスの鳴き声

<効果音>飛ぶ音

おやじ
「おや、からすのおっかさん、また逃げてきたのかい?」

カラス
「違うよ、たまには若夫婦の親どおし、仲良くしようと思っただけですよ」

おやじ
「まあまあ、うちの娘もいたらんところはあるだろうが、大目にみてくださいな。」

カラス
「いや、あんたの娘はいい子だよ、でもねえ、ついねえ・・・・・」

おやじ
「わかる、わかるよ、あんたの息子もいいやつだがやっぱり娘をとられたと思うとねえ・・・・・」

カラス
「おやってのいつまでも子供が心配なものだよねえ」

まあ、これはこれでいい話と言えなくはないですね。

なに、つまらん話でしたわ。





*****************************************************
(あとがき)
第7話くらいになるとあ、スタッフの皆さんがいろいろといいアイデアを出してくれます。

セリフをいいやすいようにご自分の方言に書き直したり、追加でエピソードが増えていたり、いっちゃなんですが「やりたい放題」ですw

結果として、面白いものができればいいので大歓迎です。

わたしは標準語に近い地方の言葉しかしらないのですが、本場の方の方言はとても味があって素晴しいですね。

完成版が予想を超えるのが楽しくて、この頃からは、曲の指定も音響効果担当に丸投げとなっていきます。(むりやり、やれ、といったわけではないですよ?w)



******************************************************

再放送をご希望のかたはコメントするか拍手をぽちっとしてください。

******************************************************

船頭の話 第六話 「旅立ち」

船頭の話 第六話 「旅立ち」

*********************************************************

「あー! ニューマジンシアであっしが出会った女の話をしましたっけ?
正体は海賊だったんですぜ。なに、つまらん話でさ」


*********************************************************

今はニューマジンシアって、呼ばれているけどね。

昔はただの、マジンシア だったのよ。


そうよ、あたしはこの島で育ったの。戻ったのは久しぶりだわ。あちこち旅をしていて、やっと戻ってこれたのよ。

この花はね、お父さんのお墓にそなえようと思ったのよ。

でも、マジンシアは一度、たいへんなさいやくにみまわれて、昔の面影がまったく残っていないの。

お父さんのお墓も、どこにあったか、わからなくなっちゃった。

たぶんここいらへんが、あたしが育った、お父さんの家があった場所だわ。

せめてここに、花を供えていこうと思うのよ。

あなたは?

ニューマジンシアになってから越してきたのね?

何かの縁と思って、お父さんの供養代わりに、あたしの思い出話につきあってくれるかしら?


(回想)**************************************************


物心ついたときから、あたしにはお母さんがいなかった。

お父さんは宿屋を経営していて、なにからなにまで、ひとりできりもりしていたわ。

あたしはお父さんを手伝って、家事を覚えたの。

いつかお婿さんをもらって、お父さんの宿屋を継ぐのが夢だったわ。

宿屋のお客さんは、旅の女の人が多かったわ。

お客さんたちは、みんな幼いあたしを可愛がってくれた。


「お客さんにはあんまり甘えてはいけないよ。別れがつらくなるからね」

お父さんはいつもそう言っていたわ。

でも、何度も立ち寄ってくれるお客さんもいたから、あたしは別れがつらいと思ったことはなかったの。


何度も再婚話があったけど、お父さんは、お母さんを忘れられないからといって、全部断っていたわ。

お父さんにお母さんって、どんな人だったのって聞いたことがあるの。


「やさしくて強い女性だったよ。

彼女と過ごした短いときは、一生に変えてもいいくらい幸せな時間だった。

もちろん、お前と過ごす毎日も幸せだけどね」

お父さんはとても優しい目をしてそう教えてくれたわ。




あたしが16になったころ、お父さんが身体を壊したの。

だんだんと体が動かなくなって、その分あたしが宿屋の仕事をかわったわ。

なじみのお客さんが多かったので、あたしが至らなくても、宿屋がやっていけなくなることはなかったわ。

お父さんがやがて寝たきりになって、介護と宿屋の仕事で、忙しかったけれど、つらいとは思わなかったのは、やさしいお客さんたちのおかげだったわ。

あたしが18になったころに、お父さんは亡くなったの。

未婚のまま、あたしは宿屋のおかみになったので、お婿さん候補がわんさかやってきたわ。

誰かと結婚して、宿屋を続けるのが一番いいと、あたしも思っていたんだけどね。

誰とも決めかねているうちに、あの男がやってきたの。


親も無く、財産もなく、どこからか流れてきた無法者、というのが正しい表現だわ。

宿屋という財産もちの若い娘ひとり、脅せばどうにかなると思ったんでしょう。

求婚を断ったら、真夜中に押し入ってきたのよ。

宿泊していたのは、女客ばかりと調べて、刃物をもってあたしを脅したわ。


「おとなしくしな。言うことを聞けば、あんたも客も痛い思いをしないですむんだぜ?」


あたしは怖ろしくて、動くことも口をきくことも、できなかった。

でも男が、逃げようとしたお客さんに、切りかかろうとしたときに、当たり前のように体が動いて、もみあいになったの。

お客さんを守らなくちゃ! って一心だったわ。


<効果音>どたんばたん


女客
「やめな、チンピラ! お嬢を離しな!」



あっという間に、男は女性客たちにこてんぱんにされて、縄でしばられてしまったの。

あまりに手際がいいのに、あたしはびっくりしてしまったわ。

いつもはやさしく笑っているお客さんたちが、怖い顔をしていたわ。

女客
「お嬢をひとりでおくには、ここはもう危険だ。さあ、いきましょう」

ひとりのお客さんがそういうと、ほかのお客さんもみんなうなずいたわ。


「なんだてめえら、なにものだ!」

女客
「クズは黙ってな」

あたしも男も、口をふさがれて、担がれるように宿屋から連れ出されたの。

男に怖ろしい目に合わされたと思ったら、今度はお客さんに・・・・・・

あたしは涙が止まらなかったわ。

連れて行かれたのは、港に停泊している一隻の船だった。

そのまま船は出港してしまったの。そして外洋にでて掲げた旗には、海賊をしめす骸骨がそめられていたの。


<効果音>波音
女客
「おかしら! お嬢をお連れしましたよ」


「そうかい、ご苦労だったね」


その船は、船長から船員まで、全部女の人しか乗っていなかった。そして船員のほとんどが、宿屋の顔見知りのお客さんだったの。

女船長は、縛られたままの男を一瞥すると、手下にあごで合図をしたわ。

<効果音>剣を抜く音、切りつける音


「ぐうっ・・・」

<効果音>海に男が落ちる音


男は手下のカットラスでのどを裂かれ、海に捨てられた。


あたしは、男の血しぶきをみて、震えているしかなかったわ。



「立派になったね」

あなたは、だれ?


「あたしはお前の母親だよ」


おかあ・・・さん・・・・・?



海賊のおかあさんと、宿屋のおとうさんは恋をして、生まれたあたしは、おとうさんが育てた。

お尋ね者のおかあさんは、上陸することを控えて、手下に様子をみにいかせていたと・・・・・・・

あたしは泣き叫んだわ。

信じない、身勝手すぎる、あたしを宿屋に帰して!


「あの人が死んだからには、あんたを守ることができるのはあたしだけさ。

そしていつか、あたしが死んだら、この船と仲間たちを守ることができるのは、あんただけだ。

この船はね、海賊船といっても、女の味方なんだよ。

あちこちの港で、男にひどい目に合わされた女たちを、助けて仲間に加えているのさ」

女客
「お嬢。あたしらはずっと、お嬢を見守ってきました。

お嬢なら立派に、おかしらの後を継げます。」


「あたしとあのひとの娘だ。できないはずがないよ」

勝手に話を進めないでよ!

マジンシアに返して!



<効果音>爆音

すさまじい衝撃が船を襲ったわ。

大波に揺れる船から、マジンシアを見ると、島からたくさんの黒煙があがっていた。

風に乗って、大勢の悲鳴が聞こえていたわ。

<効果音>爆音&破壊音&遠くの悲鳴





その日にマジンシアが崩壊したのよ。

そのあとのマジンシアは、魔物が闊歩するおそろしい地になってしまった。

あたしは帰ることはかなわず、海賊船に乗って旅をするしかなかったの。

そしてお母さんが尊敬できる人だとわかり、船員たちの助けもあって、海賊船の一員となったの。

マジンシアが、ニューマジンシアとなって復興しても、あたしは戻らなかったわ。

世界のどこにでも、不幸な女たちがたくさんいて、あたしはお母さんを助けて、可愛そうな女たちを救ってきたの。


「あのひとはあたしの生き方を許してくれた。あんな心の大きい人はいないよ。」

船がマジンシアに近づくことがあると、おかあさんは島のほうへ向かって、さびしそうに視線をを送っていたわ。


先日、お母さんが亡くなったのよ。

ずっと離れていたけれど、お母さんもお父さんをずっと愛していたことを、あたしはお父さんに報告にきたのよ。

女客
「お嬢! そろそろ出航しないとやばいです!」

お迎えがきちゃったわね。

<音楽>移りゆく時代  終了




女客
「お嬢! 急いでください!」

あわてるんじゃないよ、それにね、おかしらとお呼び。

話を聞いてくれてありがとう。

ニューマジンシアは、あたしの故郷とはいえないわ。

きっともう、戻ることはないでしょうね。


<効果音>波の音かぶせ

女客
「お嬢! どっちの海へ向かいますかー?」

おかしらとお呼びったら! 風の吹くほうにいくのさ、さあ、帆をあげな!

女客
「ヨーソロー!」

*****************************************************
(あとがき)

第六話あたりから、音響効果のこだわりがでてきました。

マジンシア倒壊のシーンなどは、いろいろな音を重ねて作っていただいています。

頼むとどんな効果音でも「ムリ」とはいわないので(言わせないわけではないですよ?)、つい期待していまい、どんどん要求がエスカレートしてくるのですがw

******************************************************

再放送をご希望のかたはコメントするか拍手をぽちっとしてください。

******************************************************

船頭の話 第五話 「 海賊船沈没秘話 」

船頭の話 第五話 「 女海賊船秘話 」
               原作脚本:ジニー

*********************************************************

「あー!ブリティンであっしが出会った男の話をしましたっけ?
正体はシーフでしたぜ。なに、つまらん話でさ。」

*********************************************************


<アナウンス>
本編では、ストーリー上必要なため、派閥に関する仕様が、一部正確ではありません。ご了承ください。




<効果音>酒場のざわめき


「あっちへいけ、ジジイ! あんたにおごる酒なんざねえよ!」

老人(酔っ払い)
「わしをじゃけんにするたー、なにごとだー!わしはなー、海賊の一味だったんだぞ、ほれ、こわくなったろう? こわいじゃろうー? なにもせんから、一杯おごれ!」


男「だああ! 抱きつくな、ジジイ! あんたみたいにひょろひょろしたのが、海賊のわけがないだろうがああ!」


老人(酔っ払い)
「なにおいうかああ、いいからおごるんじゃああああ」

老人の孫娘
「ああ! おじいちゃん、またこんなところに! ごめんなさい、ごめんなさい、おじいちゃんがご迷惑を・・・・」


「あんたジジィの孫か、べっぴんさんじゃねえか。よし、あんたが勺をしてくれるなら、ジジイにも一杯おごってやろう」

老人
「孫を酒場女と一緒にするんじゃない! わしが海賊時代の大活躍の話をしてやるかわりに、一杯おごれ!」


「俺はジジイの話になんか興味ないわああ!」

老人
「いいから聞くんじゃ、若造がああああ」

老人の孫娘
「ああ、お願い、おじいちゃん、落ち着いて・・・・・」


(老人の回想語り)*****************************************

おかしらの名前も、船の名前もいえんな。ちょっとばかり、有名だったんでの。

おかしらは女でね。女だてらに海賊船の船長をやってるだけあって、すごい美人なんですが、おっかない女でしたよ。

手下もこわもてばっかりだ。


<効果音>酒場の喧騒と、外を走る馬の音MIX

ブリティンで、翌朝は出航するんで、上陸できるやつみんなで、酒場にいたのよ。

なんだか派閥のやつらが、やたらに街中を走り回っていたわ。

酒場のおやじの話じゃ、戦争中でぴりぴりしてるってことだった。

わしたちは、海賊だとはばれないように、上陸しているんで、大して気にもしていなかったがな。

ところが、蛇の道をみつける蛇はいるもんだ。

こそこそと話しかけてきた男がいた。

密航者
「もしもし、そこの海賊船の船長さん。よければあたしを仲間にいれてくれませんかね?」

女船長(酔っ払ってます)
「あんた、だれ?船員は募集してないよ」

密航者
「まあ、そういわずに、あたしはこれでも結構役に立ちますよ?」

女船長
「あたしの船に、得体の知れない奴は、のせないよ。あっちにいきな」

密航者
「はあ、そうですか・・・・・残念です」

男はそれであきらめたのか、いなくなった。

翌朝、波止場で出航の準備をしていると、桟橋にあの男がいる。

乗せて欲しそうにうろうろとしていたが、無視をされて、あきらめたのだろう、いつのまにかいなくなっていた。

ブリティンから船はニジェルムにむかった。あそこは金持ちのリゾート地だからな。

付近の金持ちの船を襲うってわけだ。

ところがたどり着く前に、大量のシーサーペントに襲われた。


船員「船長ー、なんすかね、ここらに海蛇の巣でもありましたっけかね」

女船長「今年は気候がよかったからねえ。

海蛇もしこたま卵を産んだんだろうさ。

やろうども、さっさとかたずけやがれ!」

船長「アイアイサー!」

あんなにすごい海蛇の群れはみたことがなかったわ。




一味は余裕で全滅はさせたものの、船の修理は必要だったので、ベスパーに寄ったんじゃ。

派閥戦争はベスパーでも火種があるようで、夜通し街中を駆けまわる、ひずめの音がやかましかったの。

<効果音>酒場とひずめ

上陸すれば、あたりまえのように、酒場に繰り出した。
飲んでいると、ブリティンにいた、あの男がすりよってきた。

密航者
「もしもし、船長さん、無事についてよかったですねえ」

女船長
「なんだ、あんた。別の船でここまできたのかい?」

密航者
「はい、親切な船に乗せてもらいました。

どうでしょう、ここから先は、船長さんの船に、乗せてもらえないですかねえ」

船長
「おことわりだね。また親切な船とやらを、みつけたらいいわ」

密航者
「そうですか・・・・・残念です・・・」

出航の朝、男は未練がましく桟橋にきていたが、誰も相手をしなかったので、いつの間にかいなくなってしまった。

ニジェルム方向はケチがついたってことで、ニューマジンシアに船は向かった。ニューマジンシアも、裕福なやつらが多く住んでいるからな。


<効果音>激しい水音


船員「スカリスがでたぞー!」

船長「なんだってー!? 逃げろ! 船を守れー!」

船員「ア、アイアイサー!」


明日にはニューマジンシアにつくだろうって時でしたよ。おそろしく巨大な魔物が現れた。

太い二本の腕で、船を叩き壊そうと追ってくるんですよ。


夜通し必死で、ニューマジンシアの港を目指しましたよ。


<効果音>桟橋の波の音

港の直前で、魔物は消えましてね、ほっとしたのもつかの間、桟橋にずらーっと派閥の奴らが、騎乗のまま、わしたちを待ち構えていたんですよ。



女船長(愛想よく)
「なにごとかしら。あたしの船は善良な商船ですよ」

派閥隊長
「だまれ、おまえが海賊だろうが知ったことではない。

たずねたいことがあるだけだ。ブリティンから男をのせなかったか」

女船長(開き直る)
「そういや、乗りたがった男はいたけどね、胡散臭いんで、のせなかったよ。」

派閥隊長
「それならいい。もし嘘をついていれば、お前の船は次の航海で海の藻屑となるだろう」

派閥一行はきびすを返すと、ひずめの音を響かせて、立ち去っていきました。

ニューマジンシアはすでに派閥都市ではなくなっていたんで、街は静かなものでした。

なんとか船の修理をして、次の航海にでたんですがね。

さすがにケチがつきまくりなんで、バッカニアーズデンに向かうことになったんですわ。

女船長
「あの島が一番くつろげるからね、なにしろ海賊と盗人しかいないからさ」

<効果音>激しい水音


船員
「せ・・・・船長!! か、カリュプディスが、あああ、津波がきますー!!」

女船長
「なんだってえええー!! ふ、ふざけるなー!!」

船員
「ふ、ふざけてませーん! 触手がー! 舵をやられましたー!」

女船長
「小船をだせー! にーげーろー!!」

船員
「アーイアーイサー!!」

ケチがつくなんてもんじゃないですわ。わしらは、船を捨てて、命からがら小船に乗り移ったんですよ。

そうしましたらね、小船に1匹のネズミが飛び乗ってきたんですよ。そいつは頭から着地しましてね。

密航者
「イテエ」

ネズミが喋ったんですよ。そこからの船長は早かった。ネズミをとっ捕まえましてね。

女船長
「おまえのせいかあああああああ!」


船長は、ねずみの尻尾をつかんでぶら下げると、腰から愛用のカットラスを抜いて、やつを真っ二つに切っちまったんですよ。

<効果音>切断音

ネズミの返り血を浴びた船長の怖ろしかったことったらもう・・・・。

ネズミの腹から、紫色に光る宝玉がころんと飛び出しましてね。船長はそれをつかむと、ネズミの死体と一緒に、魔物にむかって投げつけたんです。

受け損なった魔物が、海に落ちた宝玉を追って沈んでいきましてね。

船も魔物の触手にしっかりととらわれたまま、一緒に海に沈んでいきました。



<効果音>おだやかな波音


すべてが消えると、海は、あっというまに、すっかり、静かになりました。

あの宝玉は、みたことがありましたよ。派閥都市で、いつも戦争の元になっている、シギルでした。街を支配する力があるという、あれですわ。

あの男は、ネズミの姿に化けて、わしらの船に密航してた、派閥シーフだったんですわ。

やつを追って、派閥魔法使いが、シギルを追う魔物を放っていたんですわ。

えらい迷惑な話ですわー。

<効果音>おだやかな波音

女船長(絶叫お願いします)
「あ、た、し、の・・・・・あたしの船があああああ!!」

あのときの船長の泣き顔と叫び声が忘れられませんわ。

なにしろ船長がマジ泣きしたのをみたのは初めてでね。

意外とかわいいもんだとびっくりしましたわ。


(老人の昔語り)終了*************************************



<効果音>酒場

老人
「どうじゃ? 聞いたことがあるじゃろう? バッカニアーズデン沖で、なぞの遭難をしたあの女海賊船の話じゃよ」


「そんなわけがあったとは・・・・まて、ジジイが活躍した場面がないぞ」

老人
「実はな、密航者がいることは、わしにはわかっていたんじゃよ。人数分食事を出しても、なぜか毎回ひとり分足りなくなってな。おかーしいなーとは思っていたんじゃよ、どうじゃ? えらいだろう?」


「それのどこが、活躍なんだよ」


孫娘(割り込むように)
「だっておじいちゃんは、コックとして乗っていたんですもの。というか、誘拐されて、コックをやらされてたっていうのが正しいわ」



「なんじゃそりゃ。それは海賊の一味とはいわんな」

孫娘
「でしょー、おまけに船酔いがひどくて、かわりのコックが見つかるまでは、いないよりはマシだからって、連れまわされていたのよー。ないでしょー?」


「ないなー」

老人
「お、おい、ちょっと、それは、いわない約束・・・・」

孫娘
「あ、おじいちゃん。わたし、この人と気が合うみたいだから、もう少し遊んでいくわ。

おじいちゃんは先に帰ってね。

ほら、おばあちゃんも迎えにきたわよ」

老人
「なに!?」

女海賊
「あんたあああ! 

またこんなところで油売ってー!

明日のランチの仕込があるんだからさっさと帰ってきなさいよ!」

老人
「ひいい! 船長せっかんはやめてええええ!」

女海賊
「船長いうなってあれほどいってるだろうがあああ!」

<効果音>がたんばたん


「おい・・・・船長って・・・・」

孫娘
「うふふ、気にしちゃダメよ、さ、飲みましょ♪」

<効果音>グラスで乾杯


************************************************
(あとがき)

第五話は、離脱した初期スタッフに海賊役をお願いしていたので、役柄を女性にして、新期の方にお願いをしました。

某ラジオのパーソナリティーをされている方で、地元の言葉がいいということで、セリフは好きな風に語尾をかえたりしていただき、とてもいい味がでてます。

叫びが多くて、ご迷惑をおかけしたので申し訳なかったです。

他にも、彼女つながりで男性の方に参加していただきました。

さらにゲストとして、一回限り参加の方もいらっしゃいます。

いろいろな方の参加が増えて、うれしい限りでした。

******************************************************

再放送をご希望のかたはコメントするか拍手をぽちっとしてください。

******************************************************


船頭の話 第四話 「たたずむ女」

船頭の話 第四話 「たたずむ女」
             原作脚本:ジニー

*********************************************************

「あー!ムーングロウであっしが出会った女の話をしましたっけ?
あっしより醜い奴は居ないって言うんですぜ。なに、つまらん話でさ」

*********************************************************

<効果音>波音

船頭
「わしの若い頃の話ですわ。その女は、真っ白なドレスを着てましてね、港の桟橋に毎日立っているんですわ。ずっと船がはいってくるのを待っているようですが、船が入っても、目当ての相手がいないのか動かないんですわ。ただ毎日ずっと、海のほうをみながら、立っているだけなんですわ。
気になりましてね、つい声をかけたんですわ」


あら、あなた、みない顔ね。最近ムーングロウにきたの?ふーん。
ああ、ここは狭い島だから、よそ者はめだつのよ。特にあなたのように顔が醜い船乗りさんはね。


「ここはおかしな街だな。女たちは、俺の顔には傷ひとつ無いって言うのに、口をそろえて、醜いといいやがる。それなのに、顔中やけどのあとが残っている男のことは、かっこいいとか、美男子とか、おかしいだろ?」



ここはムーングロウだもの。ほかとは違うのよ、ふふふ




ほかの島のことは知らないわ。わたしは生粋の、ムーングロウ生まれの、ムーングロウ育ち。

ムーングロウは気候が豊かな素敵なところよ。

シーマーケットあたりからくる、暖かい海流のおかげですごしやすく、ダガー島からの冷たい海流で、冬は少しだけ雪が降る。

ムーングロウ島は人口は少ないので、みんなそれなりに顔見知りよ。

本格的な魔法の修行なら、ウインドまでいくのでしょうけれど、その前にまずムーングロウで、魔法の基礎を学ぶのよ。

街の中を含めて、4箇所の魔法屋で、師匠になる魔法使いに出会えるはずだわ。
ライキュームまでいけば、書写を学ぶこともできるし、なによりも大切なのは、望遠鏡で星の運行をみることができるのは、ムーングロウだけってことよ。

環境がよいので、ここで生まれたものはみんな、ちょっとした魔法は使えるの。

島の外からくる、魔法使い志願者は、たいていはムーンゲートからやってくるの。
そしてすぐにどこかの魔法使いのところの住み込みとなり、見習い魔法使いのローブをまとうわ。

ムーングロウ島では、あなたみたいな船乗りの格好の人はね、見習い魔法使いとは扱いが違うのよ。


<音楽終了>森を流れる川


ふふふ、本当にあなた、醜いわねえ。


「そりゃあ、俺は美男子ってわけじゃないさ。だからって十人並みだろう?醜いっていわれるほど、ひどくはないだろう」


わかってないのねえ。

わたしが知っている、男らしい船乗りたちはみんな、顔にやけどのあとがあるわ。どうしてか、あなたにわかるかしら。


「知らないね。よっぽどへまばっかりしていたんじゃないのか」

ふふふ、ムーングロウの港を、あなた、ちゃんと知っているかしら。


「知っているも何も、ここは使えない港だ。入り口に水エレが群がっているからな。あんなところを通るなんてごめんだね。」

そうよ、だからまっとうに港に入ってくる船の船乗りはみんな、水エレを戦わなくてはならないの。立派に戦った船乗りほど、たくさんのやけどをおっているのよ。

水エレに受けた傷は、魔法でも治癒が遅いのよ。治る前に、次の傷を負ってしまうから、傷はどんどん増えてしまうの。

あなたみたいに、顔に傷ひとつない船乗りは、港ではないところから上陸した船乗りって、まるわかりだわ。

ムーングロウの女はね、船乗りに関しては、傷の多い男を大事にするのよ。


「どうしてわざわざ危険をおかさなくちゃならないんだ。水エレがいない場所で荷おろしすれば安全じゃないか」

ムーングロウ島はね、生産物が少ないのよ。
取れるのは綿花と鹿の皮と、農産物くらいしかないの。鉄も、特殊な皮も素材も、すべて島の外から届くのを待っているのよ。

港以外で荷おろしをして、陸路で届いた荷物には、経費が上乗せされるから、やっと届いた商品でも価格が高すぎて、手に入らない人も多いのよ。

だからね、港に直接届けてくれる船と船乗りは、大歓迎なの。

危険をおかして、傷を負ってもなお、港へ入ってくれる勇敢な船乗りが、ムーングロウの女たちの羨望のまとなのよ。

船乗りのくせに、あなたみたいに安全だけ求める男はね、この街ではまったくもてないのよ。


「高くなろうが荷物が届くんだからいいだろうが。だいたい、俺が醜いっていうなら、なんだってあんたは俺にかまうんだ。」


ふふふ、どうしてかしらね。あなたが、わたしの恋人に似ているからかしらね。


「なんだ、あんたのいい人は、俺みたいな醜い男だったのかよ」

誰だって最初は、身体に傷なんかないわ。幼馴染のあの人は、街のために、どんなにたくさんの水エレがいたって、勇敢に船を港につけてくれていたわ。私のつたない魔法では、傷がなかなか治らなくて・・・・・。しまいにはいつも頭巾をかぶらないといけないくらいに、顔に傷をおってしまったわ。


「それがあんたがいうところの、美男子なんだろう?」

ええ、そうよ。あんなに美しく、勇敢で、強い心の人はいなかったわ。あの人は死ぬまで勇敢だったわ・・・・。


(回想の海戦)

<効果音>破壊音

船員「船長!船長ー!今日の水エレは数が多すぎます!船が、船がもちません!!」

船長「泣き言をいうな!もうすぐ桟橋だ、街のみんなが、この荷物を待っているんだ!」

船員「左舷!被害甚大です!」

船長「こらえろ! もう少し、もう少しなんだ!」

船員「でも、でも!! うわあああ」


<効果音>破壊音


<効果音>波音




あなたは、傷を負う前のあの人に、ちょっとだけ似てるわ。


「死ぬくらいなら、生きて醜いといわれたほうが、賢いとおもうがね」




ええ、そうよね、あなたはあの人とは違う・・・・・

あの人は、愚かだったのかしら。

わたしには、わからないの。

あの人をとめたらよかったのかしら。

とめたらあの人の誇りが、傷ついてしまったのではないかしら。

わたしには、わからないの。

ただずっと、どうしたらよかったのだろうって、そればかりを思っているの。



船頭
「それっきり、女は海のほうをむいて、ひとっことも喋らなくなりましたわ。わしは黙って立ち去るしかありませんでしたわ。なに、つまらん話でしたわ。」



****************************************************
(あとがき)

第四話は、放送は3回目に実施されました。

録音は先に行われていたの、初期スタッフのひとりの最後の声もはいっています。

メインMCのウィスパーボイスを堪能していただけるかと思います。

また、有名漫画家さんもドラマデビュー作ともなっており、最初から「叫び」という、過酷な要求に応えていただいて、大変ご迷惑をおかけしました。

こちらは後に、スピンオフも作成している題材です。

*****************************************************

再放送をご希望のかたはコメントするか拍手をぽちっとしてください。

*************************************************



プロフィール

慈仁[Ginney&ginney]

Author:慈仁[Ginney&ginney]
FC2ブログへようこそ!

カレンダー
09 | 2017/10 | 11
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31 - - - -
最新記事
月別アーカイブ
カテゴリ
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

FC2カウンター
最新コメント
リンク
最新トラックバック
RSSリンクの表示
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QRコード
検索フォーム